モンゴルサッカーリーグの全て ~現地日本人選手がプレーヤー目線で解説~

モンゴルサッカーリーグの全て ~現地日本人選手がプレーヤー目線で解説~

2022年 FIFAワールドカップ カタール大会 アジア2次予選の抽選が行われました。

7大会連続の本大会出場を目指す日本代表は、キルギス、タジキスタン、ミャンマー、モンゴルと同じF組に入りました。

私が現在プレーするモンゴル代表との試合は、2019年10月10日に日本でのホーム試合、2020年3月31日にモンゴルでのホーム試合が行われます。

そこで今回は、日本代表が初対戦するモンゴルのサッカーについてまとめました。

モンゴル現地に滞在しているからこそ、お伝えできる情報を記載しました。

 

目次

モンゴル国の基本情報

・正式な国名は『モンゴル国』(通称モンゴル)

・英語では『Mongolia』と呼ばれている

・人口は約307万6千人

・首都のウランバートルに国全体の人口約1/2が住んでいる(145.2万人)

・日本と同じ東アジア地域の国(サッカーも同じ東アジアサッカー連盟に所属)

・北はロシア、南は中国に囲まれた内陸国(海はありません)

・面積は日本の約4倍(約156万㎢)

・大陸性気候で、年間通して乾燥している地域

・夏の平均気温は約20℃だが、30℃を超える日もある

・冬の平均気温は約-20℃で、-35℃を下回る日があることも珍しくない

・宗教はチベット仏教が主流

・言語はモンゴル語(サエンバイノ~ → こんにちは)

・政体は大統領制で、議会制民主主義

・通貨はトゥグルグ(100円 = 約2400トゥグルグ)

・日本からは成田空港から直行便が出ている(片道約5時間半)

・日本国民はビザ無しで30日間の滞在可能(入国の際に、国外へ出国する予約済みのチケットを要求される場合あり)

・パスポートの残材有効期限は、モンゴル到着時に6ヶ月以上で、査証欄が余白2ページ以上必要

 

国内リーグについて

2019年現在、モンゴルリーグは1部、2部、3部とカテゴリーが分かれております。

各カテゴリーの下位2チームと、上位2チームが昇降格。

1部リーグの優勝チームにはAFCカップ(Jリーグ上位チームが出場するACLより1つ下のカテゴリーとされる、アジア諸国のクラブチームによる国際大会)のプレーオフ出場権が与えられます。

また、1部リーグは『Mazala National League(マザラ ナショナル リーグ)』という名称で呼ばれております。

「マザラ」とは、モンゴルの飲料会社の名称で、リーグのスポンサーです。スポンサー名が、そのままリーグ名称になっています。

2019年シーズンの1部リーグは、4月13日から10月27日までの期間で開催されています。

”モンゴル国の基本情報”でも紹介した通り、真冬は-30℃台まで気温が下がる寒い地域なので、外でサッカーがプレーできる期間がとても短いです。

その気候の影響が、サッカーリーグの開催期間にも大きく影響を受けています。

以前は5月に開幕し、9月には全日程を終えるようなシーズンもありました。

※他国に比べると、短期集中で行われるリーグ戦

 

1部リーグは全10チームで構成されています。

リーグ戦は、ホーム&アウェイによる2回戦総当りのリーグ形式ですが、各チームがホームスタジアムを所有している訳ではありません。

2019年、1部リーグに参加しているチームのうち、3チームしかホームスタジアムを所有していないのが実情です。

そのため、残りの7チームは、ウランバートルの中心に位置する、モンゴルサッカー協会が所有するスタジアム(通称:MFF フットボール センター)を、ホームスタジアム扱いとして利用しております。

また、10チーム中9チームは首都のウランバートルが本拠地のチームなので、シーズン中で行われる8割の試合が、MFFフットボールセンターでの試合となります。

首都のウランバートルに人口が集中している国内事情が、そのままサッカーリーグにも反映されています。

また、各スタジアムのピッチは全て人工芝です。

寒い気候の影響を受けて天然芝が育たないため、モンゴルでは人工芝しか存在しません。

公式試合では、取替え式スパイクの使用は禁止されています。

ワールドカップ予選が行われる予定のMFF フットボール センターも、例外なく人工芝ピッチのスタジアムです。

日本代表の選手達も、モンゴルで行われる試合の際は、地面が硬い人工芝ピッチへの対策が必須でしょう。

※MFF フットボール センターの様子

 

外国人選手枠について

モンゴルリーグでは、外国人選手枠が存在します。

2019年シーズンのレギュレーションは、試合に出場できる外国人選手は3人+アジア人選手1人です。

例えば、スタメン11人中7人がモンゴル人だった場合、残りの4人(3+1)は外国人が出場可能です。

ブラジル人、スペイン人、ナイジェリア人 + 日本人(アジア枠)というような形であればOKです。

日本人、日本人、日本人 + 日本人(アジア枠)という形でも、もちろんOKです。

しかし、このレギュレーションは毎年ルールが変わっているので、来年以降はどうなるのか現時点では不明です。

2020年以降は外国人選手枠が減ると噂されています。

※私が所属するFCウランバートルの昨年のスタメン。この試合では私(日本人)の他、アメリカ人選手、セネガル人選手が共にプレー。

ちなみに、昨シーズンはアジア枠が無かったため、外国人選手枠は3人でした。

その前までは、アジア枠などは関係なく外国人選手枠は4人まで。

もし、現地へのトライアルなどを検討している選手は、事前に外国人枠を把握しておく必要があります。



スポンサーリンク

 

選手の待遇について

先にも紹介した通り、モンゴルでプレーする外国人選手が数多く存在します。現在一番多い国籍の選手は、日本人選手です。

先日、移籍期間を終えたばかりで正確な数字を把握できておりませんが、2019年シーズン1部~3部まで合わせると、合計20人以上の日本人選手がプレーしています。

その他にも、ロシア人選手やセルビア人選手が多い印象です。

また、アフリカ系の選手も必ず毎年プレーしています。

今シーズンは、ウランバートル・シティFCにフランスリーグのモナコでプレーしていた経歴を持つ、元セネガル代表の選手がプレーしています。

外国人選手は、現地のモンゴル人選手に比べると高待遇で迎え入れられる場合もあります。

実力のある選手には、1ヶ月あたり約10万円~30万円で契約するような資金力のあるチームもいくつか存在します。

モンゴルでの平均月収は1ヶ月あたり約4~5万円と言われていますので、高待遇と言えるでしょう。

しかし、経歴や実力が無い選手が無給、または無給に限りなく近い待遇でチームと契約し、プロキャリアをスタートさせるようなケースも多く、一概に待遇が良いリーグとは言えません。

当たり前ですが、全てはその選手の実力次第です。

それは、現地のモンゴル人選手も一緒です。

代表クラスの選手がサッカーのみで生計を立てている一方、別で仕事をしながらプレーする選手も数多く存在します。

モンゴル人選手達も例外なく、実力ある選手には多くの給料が支払われますが、そうではない選手たちは別の仕事で生計を立てる必要があります。

様々な待遇の選手が混在するリーグと言えるでしょう。

※リーグ戦やカップ戦では、優勝を含む上位チームに賞金も用意されている

 

モンゴル代表について

モンゴル代表は、ワールドカップ2002年大会予選(日本・韓国)から連続で過去5回アジア予選に参加しておりますが、全ての大会1次予選での敗北を喫しています。

前回のワールドカップ2018年大会予選(ロシア)では、2015年に行われた東ティモールとの試合に敗れ、世界最速での敗退国となりました。

しかし、近年プロ化されたモンゴルリーグは、世界各国から外国人監督、及び外国人選手が多数集まるような状況になり、それと共にサッカーのレベルも向上。

良い流れを更に畳み掛けるように、2017年にドイツ人のミヒャエル・バイス氏(元フィリピン代表監督・国見高校や京都サンガでの指導歴もあり)が監督に就任しました。

アジアの舞台でも勝利することができなかった代表チームが、メキメキと力を付けて、今回のワールドカップ予選ではブルネイ・ダルサラーム代表との1次予選突破をかけた試合に勝利。

モンゴルサッカー史上初の1次予選突破を果たしました。

 

■アジア1次予選で活躍した選手

・ツェデンバル選手(Ulaanbaatar City FC所属)

今大会キャプテンマークを巻いた左サイドバック。左足から繰り出される正確なキックが武器。ブルネイとの第1戦では直接フリーキックを決めて、第2戦ではPKでゴールを奪った。

※ツェデンバル選手(手前23番)出典:https://www.facebook.com/MongolianFootballFederation/?ref=br_rs

 

・ナランボルド選手(Athletic220 FC所属)

モンゴル屈指のストライカー。強靭なフィジカルを武器に貪欲にゴールを狙う。モンゴルリーグでも外国人選手たちに負けず、毎年得点王争いをしている点取り屋。

※ナランボルド選手 出典:https://www.facebook.com/MongolianFootballFederation/?ref=br_rs

 

・バリジャニャム選手(FC Ulaanbaatar所属)

モンゴルサッカー界の次世代を担う逸材。現在19歳ながら、モンゴル代表の切り札として、攻撃にアクセントを加えるアタッカー。クイックネスとスピードが武器で、日本代表の香川選手を彷彿とさせるプレースタイル。

※バリジャニャム選手 出典:https://www.facebook.com/MongolianFootballFederation/?ref=br_rs

 

まとめ

・日本と同じ東アジアに位置してるモンゴルだが、気候条件がとても厳しい国

・気候条件や国内事情が、サッカー界も大きく影響を受けている

・国内リーグには外国人も多く、プロとして生計を立てている選手も存在している一方、厳しい待遇でプレーしている選手も多数存在

・モンゴル代表は近年急激に成長しており、少しずつ国内でもサッカー熱が高まってきている

以上です。

モンゴルサッカーに関する質問や現地トライアルに関することなど、お気軽にご質問ください。

※お問い合わせ

大津一貴

About The Author

大津 一貴
夢を諦めて一般企業へ就職するも、22歳でがんを患い生き方を改める 。その後、脱サラして海外でプロサッカー選手に。モンゴル1部・FCウランバートル所属。1989年10月25日生まれ、北海道出身。

カテゴリー

アーカイブ